解散時の残余財産の帰属についてが、わかりません。

今年で、医療法人を設立してから10年の月日経ちました。医療法人化することにし、
診療に尽力しました。しかし本年体調を崩し、体力の限界のようで、引退しようかと考えております。
 しかし、後継者がおらず、いつまで経っても医療法人を引退することができません。
 また、後継者がいないにも関わらず、医療法人を解散した時の残余財産のことも心配の種となっています。

<失敗のポイント>
 診療所が繁盛しているのにも関わらず、後継者がいないため診療所を閉めることにして、法人を解散することを悩まれている人は意外にも多くなっているようです。
 医療法人を設立する際においては、あらかじめ後継者など将来的な計画も立てることが大切となるでしょう。

<正しい対応>
 このケースの場合においては、診療所を譲り受けたい人がいらっしゃれば、法人の持分を売却することにして、法人財産であるところの医療機器、カルテなどのすべての資産負債を一切合切、譲渡することが可能となります。
 後継者がいない場合においては、いつまでの医療法人から引退しないでいるわけにもいきません。したがって、診療所を譲り受けたいと考えている人を探すことが賢明でしょう。
 また、どうしても譲り受けたい人がいない場合においては、知事の認可を得て、法人清算手続をとることになるでしょう。
 この場合においては、個別の財産を一つ一つもしくは一括して売却することにし、未払金などの負債は返済することにして、残額を各出資者の持分に応じて分配することになるでしょう。

<税法等の解説>
○ 医療法人の解散
医療法人は下記の事由が生じた場合においては、解散となります。
(1) 他の医療法人との合併。
(2) 破産手続開始の決定。
(3) 目的たる業務の成功の不能。
(4) 社員総会の決議。
(5) 社員の欠亡。
(6) 設立認可の取消。
 その際、残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとなります。

[注意]
 旧来の医療法人の定款については、解散した場合の残余財産は払込済出資額に応じて分配するという文言が記載されておりました。しかし、2007年4月以降に認可された基金拠出型の医療法人については、非営利性の徹底から、財産の分配が不可能となってしまいました。
 これまでは収益が出た法人を、利益の分配目的で意図的に解散させてしまうという、医療法人の根本にある非営利性を否定する行為の排除が不可能であるという問題点を抱えておりました。そのため、2007年4月以降に設立された医療法人については、解散時の残余財産は国や地方公共団体、あるいは他の医療法人等に帰属させるということになりました。今後は、後継者が決まっていない医療法人での設備投資や資産運営についてなど、慎重に検討することが必要となるでしょう。

○ 2007年4月以前の医療法人の譲渡について(旧法)
法人の持分を売却することによって、法人財産であるところの医療機器、カルテなどの
すべて資産負債を一切合切、譲渡することが可能となります。
値段は、医療機器などの資産から、未払金などの負債を差し引いた純資産のほか、診療
所の収益力も加味されるのが一般的となっておりますので、今まで培ってこられた「暖簾(診療所の営業権)」も無駄にはならないことになりますし、新しく始める方にとっても開業当初の収入不足に悩まされることはなくなることになりますので、双方にとってメリットのあることといえるでしょう。

○ 法人売却の税金について
法人の持分である非上場の株式等を売却した場合においては、売却価格から出資額また
は購入価格を差し引いた金額を、譲渡所得として申告することになります。譲渡所得は、他の所得とは別の申告分離課税になり、所得税と住民税を合わせて20パーセントの税率となります。
 また法人売却にともない、役員を交代することになるようです。その際、先に退職金の支給を受けておくのもよい方法と言えるでしょう。退職金の支給によって、売却価格が下がる上に、退職所得(分離課税)は税務上有利な設定となりますので、検討する価値があると考えられます。

○ 買い手がいない場合(旧法のケース)
知事の認可を得て、法人の清算手続きをとることになるようです。つまり、個別の財産
を一つ一つあるいは一括して売却し、未払金などの負債は返済し、残額を各出資者に持分に応じて分配することとなるようです。出資額限度法人の場合には、出資額を限度としての払いもどしとなります。
 解散により残余財産の分配を受けた出資者については、交付を受けた金銭が法人の資本金等の額を超える場合にはその差額を配当所得として申告する必要があると言えます。この場合においては、配当所得は他の所得と合算して計算し、所得税と住民税が算出されることになります。
 通常は、配当所得よりも退職所得の方が有利になる場合が多くなっておりますので、先に役員退職金の支給を受けておいて、退職所得として申告することも検討してみるべきだと言えるでしょう。

<税理士からのPOINT!>
 解散や譲渡を検討している場合については、残余財産のことを考慮して、役員報酬や退職金を適切に設定するなど、計画的に運営していくことが大切なことと言えるでしょう。