役員退職金の支給金額と支払方法について

長年、当医院の経営に尽力されてきた理事長が退職することになりました。そこで、こ
れまでの功績に報いるため、1億円の退職金を支給しようと思い、別の理事に相談しました。当医院には役員退職金規定がなかったので、支給額は世間相場を基にしました。しかし、その理事から支給額が適正かどうか、または決定手続についても、私1人で決めていいのかと指摘されました。

<失敗のポイント>
 退職時に支払われる役員退職金は、その功績に見合った金額を支給すべきという考え方は間違っていません。しかし、主観で金額を決めると、不満やトラブルを生む原因になります。
 役員退職金の支給額は、役員退職金規定に基づいて支給する必要があります。

<正しい対応>
 医療法人では、あらかじめ役員退職金規定を整備しておきます。そして、役員が退職する際にはその規定に基づいて、金額を算出し、支給額を決定します。その上で、臨時社員総会を開催し、最終決定を下すようにしましょう。
 役員退職金規定で、役員の勤続期間や功績、退職の事情などを考慮しておけば、退職する役員の貢献を反映したものになるはずです。

<税法等の解説>
役員退職金の支給額と支払方法
 役員退職金に関しては、事前に役員退職金規定を整備し、その規定に基づいて支給しなければなりません。具体的な金額の決定は、臨時社員総会での決議を必要とします。

○ 役員退職金の支給額の計算方法
役員に対する退職金については、以下の点を考慮し、計算します。
(1) 役員の勤続期間。
(2) 退職の事情。
(3) 同種同規模法人における役員退職金の支給状況。

 退職金は、以下のような計算式によって算出します。
 一般的に以下の計算式であれば、相当とみなされ損金算入が可能です。不相当に高額な部分は、損金に算入されないので、適正な役員退職金を算出することが重要です。
【計算式】
(1) 功績倍率法
退職金=退職前の報酬月額×勤続年数×功績倍率
(2) 1年当たり平均額法
退職金=類似比較法人の1年あたりの退職金平均額(※)×勤続年数
(※)(一)比較法人の役員退職金÷在職年数
   (二)(一)/比較法人数

○損金算入時期
 役員退職金の損金算入時期は、社員総会の決議等により、その額が具体的に確定した日の属する事業年度となります。(確定日基準)
 つまり、社員総会で金額を確定し、経理上例えば(役員退職金)1000万円(未払金)1000万円という処理を行えば、その事業年度の損金に算入されます。
 また、医療法人がその退職金の額を支給した日の属する事業年度において、その支給した額につき、損金経理した場合には、その事業年度の損金として取り扱うことも可能とされています。(支払日基準)
 つまり、社員総会で金額を確定したとしても、実際に支給した日に損金経理すれば、その事業年度の損金として取り扱われます。

 なお、役員に対する退職金をその額が具体的に確定した日以後の事業年度に支給した場合において、その支給した額をその事業年度で仮払金等として経理処理を行い、その後の事業年度においてその仮払金等を損金経理により償却したとしても、損金の額に算入できなくなるので、注意が必要です。

○ 退職金の源泉所得税の延滞税
退職金を支給した月の翌月10日までに源泉所得税を納付しなければなりません。
 源泉所得税を納期限までに納めない場合、不納付加算税と延滞税が課されます。不納付加算税は原則10%ですが、税務署から通知などがくる前ニ自主的に納付すれば5%となります。また、ある一定の要件を満たし、延滞に政党な理由があったと認められれば、不納付加算税が免除されることもあります。
<税理士からのPOINT!>
 役員の退職金の支給額を主観で判断するのは、トラブルの元です。しっかりとした役員退職金規定を定め、それに基づいて支給しましょう。