医療法人設立のデメリットについてが、わかりません。

一昨年独立、内科クリニックを開業し、経営をしております。「地域で支え合う医療」を
理念の下、近隣の高齢者を対象にして、訪問介護等のサービスの提供をしております。急な呼び出しも多くあり、なかなか採算の難しい事業となっていますが、3人の看護師が私の理念に共鳴してくれていることもあり、献身的に働いてくれるおかげで何とか経営を続けることができています。公共性のある事業の性格上「医療法人にした方がよい」と助言してくださる方がおりまして、この度医療法人を設立することになりました。事業計画を策定しまして、社会保険加入にともなう法定福利費の増加や、常勤事務員の雇用等により収支が合わせることができず、計画がとん挫してしまっています。

<失敗のポイント>
 社会的な意義によって、医療法人化を検討したものの、それによって増加するコストを考慮していなかったため、計画の見直しをしなければいけなくなってしまいました。

<正しい対応>
 医療法人設立には様々なメリットが存在しています。本事例のように社会的に意義のあるサービスのさらなる展開が動機になっているのであれば、より公共性の高い事業体にするため、そのメリットに着目するのは当然といえるでしょう。
 しかし医療法人設立にともなって、増加するコスト(労務費を含む)が存在しているのも事実で、それが経営を圧迫することになり、本来の目的である社会的意義を満たせなくなっては本末転倒となってしまうでしょう。
 総合的客観的に、現状の経営環境を分析し、医療法人設立のデメリットも十分考慮した上で、総合的に検討することが重要となるでしょう。

<税法等の解説>
○ 医療法人設立のデメリット
交際費の一部が損金にならない。
(1)個人では、全額損金としていた、飲食・ゴルフ接待等の交際費が、医療法人においては、一部損金にすることが不可能となってしまいます。出資金が1億円を下回る医療法人の場合において、上限600万円を対象にして、その90パーセントの540万円までしか、損金として認められることはなく、600万円を超える部分については、一分損金になることはありません。この限度額が多いか少ないかについては、それぞれの事情によると思われていますが、交際費の状況も医療法人検討事項の一部として、勘案する必要があると考えられています。ただし、中小法人の交際費課税の特例の拡充によって、2013年4月1日から2014年3月31日までの間に開始する事業年度において支出した交際費については、限度額が800万円となることもあり、その全額が損金として算入することが可能となります。

(2) 社会保険勧誘の義務が発生する。
 個人では、従業員が5人未満である場合において、必ずしも社会保険の加入の義務は存在しませんが、医療法人の場合においては、従業員の人数に関係なく、強制加入となることに留意しなければなりません。社会保険は、その約半分を医療法人が、残り半分を従業員が負担する仕組みになっていることもあり、経営上のコストは上昇することになるでしょう。

(3) 医療法人のお金は、院長個人の自由にはならない。
 医療法人では剰余金の配当が禁止されていることに留意しなければなりません。また、院長個人への貸付も制限されています。したがって、収益が拡大した場合の利益処分や、院長個人の急な資金繰りに柔軟に対応することが不可能になっています。

(4) 事務処理が増加する。
 法務局に役員変更等の登記が、都道府県知事に決算書類の提出が義務づけられる等、必要な事務処理が増加することになります。

(5) 都道府県などに指導監督が強化される。
 都道府県知事による立入検査等の指導が強化されることになります。

<税理士からのPOINT!>
 医療法人設立には多くのメリットが存在していますが、それらを有効に享受できるか否かは、医院個々の経営状況によって異なることになります。医療法人設立のデメリットの部分も考え合わせ、総合的に検討することが重要となるでしょう。