事業承継と税金について、教えてください。

現在の医療法人理事長は、理事長就任から10年経っています。
 出資額の評価を考えると早い段階で、理事長職を退いてもらって出資持分の移転を図りたいと考えています。
 この件で、息子である理事と理事長との関係が悪化してしまう結果となってしまいました。

<失敗のポイント>
 出資持分の評価が上がるために現在の理事長に退任してもらいたいと思うことは、間違いではありませんが、現理事長の承諾なく、話を進めることはできません。

<正しい対応>
(1) このケースの場合、おそらく理事長のご子息が、将来、自身が法人を譲り受けた時のことを考えて、理事長退任を考えたのだと思います。しかし、仮に理事長が退いても生前に出資持分をご子息が無償で移転した場合には、贈与税がかかります。また、売買による場合にも譲渡所得がかかりますので、十分に対策を検討することが重要です。
(2) 理事長自身の考えと、理事であるご子息の考えが一致しない場合は、トラブルの原因になりますので、時間をかけて、後々、しこりを残さないような対応が大切だと思われます。

<税法等の解説>
事業承継と税金
 生前に出資持分を無償で移転した場合には、贈与税がかかります。また、売買による場合は譲渡所得税がかかります。

○ 生前に出資持分を無償で移転する場合
生前に出資持分を無償で移転するには、移転時における出資持分の評価を相続税評価額
により行う必要があります。
 医療法人は配当が行えないため、法人内部に利益が蓄積し、設立当初に出資した金額よりもかなり高い評価になります。したがって一度に出資持分を贈与することになると、かなりの税金が発生することが考えられるので、移転する時はあらかじめ評価を下げるなんらかの対策をすることが必要です。
 また、売買で子に譲渡するということも考えられますが、売買価額は相続税評価額以上でなければ課税上問題が生じますので、贈与にせよ、売買にせよ出資持分の相続税評価額をよく理解しておく必要があります。
 なお評価を引き下げる方法としては役員の退職金等、多額の経費を支払うことにより財産の減少を図り、評価額を引き下げる方法が考えられます。

○ 相続により移転する場合
相続により移転する場合は、出資持分の評価は相続税評価額により評価することになり
ます。
 相続税評価額は相続税法における「取引相場のない株式」に準じて評価しますが、評価方法には「原則的評価方法」と「特例的評価方法」があります。
 「原則的評価方法」は「類似業種比準価額方式」・「純資産価額方式」・両者を組み合わせる「折衷方式」の3つがあり、会社規模ニ応じて評価することになります。
 また医療法人では配当ができないため、配当を基準にして評価額を算定する「特例的評価方法」は適用されません。

○ 生前贈与をする。
贈与税の基礎控除は年間110万円と定められています。そのため、毎年110万円ま
でなら、課税されずに資産を贈与していくことができます。それによって相続財産は毎年確実に減少し、いずれ課される相続税も減らすことができます。ただし相続発生から3年遡り、その間に贈与された資産は相続財産に加算されることになっています。その際、贈与にあたって納付していた税金がある場合は、贈与税額控除という形で相続税額から差し引かれます。

○ 相続時精算課税制度を適用した生前贈与
平成15年より、20歳以上の子が65歳以上の親から贈与を受け、所定の届出書を出
せば、贈与税の課税価格から最大2500万円を控除できる相続時精算課税という制度が利用できるようになりました。この制度は通常の生前贈与とは違い、贈与した者が死亡した場合、死亡した日から3年を超える分についても、過去に贈与した財産を相続財産に加算し、すでに納付した贈与税額を相続税額から差し引くことになるので、精算制度といいます。納付済みの贈与税額が相続税額よりも多い場合には、還付を受けることが可能です。
 この制度を利用するメリットは、相続財産に加算する贈与財産を、相続時の評価額ではなく、贈与を受けた時の評価額で計算するため、相続時に贈与時よりも評価額が上昇していた場合、節税効果が得られる点です。ただし、評価額が下落していた場合には、逆効果となりますので、どの財産をこの制度を利用して生前贈与するかが、重要なポイントとなります。

<税理士からのPOINT!>
 事業承継と税金の問題は、とても難しいですので、専門家のアドバイスを受けながら、どのような方法で、事業を承継していくかを決めていくことがポイントです。